空手とセパタクローを両立する中学生・髙橋杏実の挑戦
「空中で一回転する技を見て、“これやりたい”って思ったんです」
そう語るのは、中学2年生の髙橋杏実(あんじ)さん。
空手とセパタクロー、2つの競技を本気で追いかける彼女の目は、まっすぐ未来を見据えていた。

「足を使う競技がやりたかった」
メチャスポ編集部(以下、メチャ):まずは簡単に自己紹介をお願いします。
髙橋杏実さん(以下、杏実):中学2年生です。空手は小学校のときから始めていて、セパタクローは中学1年生から始めました。
メチャ:セパタクローはちょうど1年くらいですね。始めたきっかけは何だったんですか?
杏実:愛知県の「トップアスリートアカデミー」という取り組みがあって、その中のユースに応募したのがきっかけです。体験に行ったのがセパタクローでした。
愛知県「トップアスリートアカデミー」には小学5年生の頃から挑戦し、2度不合格を経験。
それでも諦めずに中学で再挑戦し、ようやくつかんだチャンスだった。

メチャ:いろんな競技がある中で、セパタクローを選んだ理由は?
杏実:もともと空手を始めたのも「蹴り」がやりたかったからで。セパタクローも足を使う競技なので、「かっこいいな」と思って。
動画で見た、空中で回転しながら放つアタック。
その一瞬で、彼女の中に新しい目標が生まれた。
「できた瞬間が、一番楽しい」
メチャ:実際にやってみてどうでした?
杏実:ボールを扱うのがすごく難しかったです。今まで球技をやってこなかったので。
同じ“足を使う”競技でも、空手とはまったく違う感覚。
戸惑いはあった。それでも――
杏実:アタックがきれいに決まったときは、すごく楽しいです。自分のプレーを見返しても、迫力があって。
できなかったことが、できるようになる。
その積み重ねが、彼女を夢中にさせている。
メチャ:逆に難しいと感じるところは?
杏実:ボールコントロールですね。自分の思ったところに飛ばすのが難しいです。
空手がくれた“武器”
メチャ:空手の経験が活きていると感じることはありますか?
杏実:空手は両足で蹴るので、セパタクローでも両足が使えるところです。
多くの選手が利き足中心でプレーする中、彼女は両足を自在に使える。
それは明確なアドバンテージだ。

メチャ:それはかなり強みですね。
杏実:はい。でも逆に、空手の癖で難しい部分もあって…。
メチャ:どんなところですか?
杏実:空手は蹴ったあとに足を引く動きがあるんですけど、セパタクローは振り抜くので、その違いに最初は戸惑いました。
体に染みついた動きが、別競技では壁になる。
しかしその壁も、彼女は少しずつ乗り越えている。
「両方やるからこそ、見えるもの」
空手では全国大会に出場し、ベスト32。
その実績を持ちながら、セパタクローにも本気で取り組む。

メチャ:空手とセパタクロー、どうやって両立しているんですか?
杏実:空手は大会前だと週2〜3回くらい練習しています。セパタクローは土日にクラブでやったり、家の庭で練習したりしています。
メチャ:庭で練習もしているんですね。
杏実:はい。できるときにボールを蹴ったりしています。
特別な環境があるわけではない。
それでも、“できることをやる”。その積み重ねが力になる。
セパタクローを始めたことで、空手の練習時間は少し減った。
それでも彼女は、どちらも手放さなかった。

メチャ:2つの競技をやっていて良かったと思うことは?
杏実:それぞれ繋がっている部分があるので、お互いのいいところを活かせることです。
メチャ:セパタクローが空手に活きている部分も?
杏実:ジャンプ力とか、体の使い方ですね。
ひとつではなく、ふたつ。
だからこそ広がる身体感覚と可能性がある。
目標は「女子初」のその先へ
メチャ:これからの目標を教えてください。
杏実:日本女子で初めて、フルのローリングアタック※(回転しながら打つ技)ができる選手になりたいです。
メチャ:どうしてそこを目指そうと?
杏実:最初に見て「やりたい」と思った技だからです。
現在は体操にも取り組み、バク転などの動きを習得中。
“できるようになるために何をすべきか”を、自分で考えて動いている。
※ローリングアタックには、1回転する「フル」と、逆足で着地する「ハーフ」があり、杏実さんはすでにハーフを習得し始めている。
セパタクローの魅力とは
メチャ:セパタクローを知らない人に、魅力を伝えるなら?
杏実:まだメジャーなスポーツではないけど、ローリングアタックみたいな華やかな技がたくさんあるところです。
空中で繰り広げられる、アクロバティックなプレー。
一度見れば、きっと心を奪われる。
「一緒にやる仲間が増えてほしい」
メチャ:これから始めたい人や、同世代にメッセージをお願いします。
杏実:一緒に教え合ったり、アドバイスし合ったりしながらできる仲間が増えたら嬉しいです。
競技人口はまだ多くない。
だからこそ、仲間の存在が大きな意味を持つ。

足で描く、未来
空手で培った“蹴り”
セパタクローで出会った“空中の表現”
その2つが交わる場所に、髙橋杏実という選手がいる。
「やりたい」と思った技を、必ず自分のものにする。
そのまっすぐな意志が、やがて新しい景色を連れてくるはずだ。
次に彼女が宙を舞うとき、
そこには、“日本女子初”という歴史が刻まれるかもしれない。
